米国ゴルフ最新情報

ミシェル・ウィーのパワースイング

タイガー・ウッズの新しいスイング

  1. ターボドライブ・セットアップ
  2. ターボドライブ・バックスイング
  3. ターボドライブ・ダウンスイング
  4. タイガーのターボドライブ・テクニックを身につける
スポーツにおけるバランス感覚の必要性  

ミシェル・ウィーのパワースイング

USGTFレベルVメンバー
ジョン・アンドリサニ

 NBCテレビ解説者であり、かつて全英オープンと全米オープンを制したジョニー・ミラーはたびたび「ミシェル・ウィーは世界で最も優れたスイングの持ち主だ」と述べているが、私は彼の意見に賛成する。 

 ミシェル・ウィーは幼い頃からゴルフの神童と呼ばれ、やがて少女期を迎えるとゴルフの天才と呼ばれ、現在に至っている。それはまるで生まれつき持ち合わせているかのように、正確にセットアップを行い、まったく無駄のないスイングから力強いショットを放つ。韓国人の父でハワイ大学教授のB・Jと母ボ・ウィーから受け継いだ優れた遺伝子に加えて、ミシェルは練習の積み重ねによって獰猛な雌の虎のように進化成長を遂げてきた。そしてタイガー・ウッズが切り拓いた力強いスイングを女子ゴルフ界に持ち込んでいる。

 ミシェルは基本に忠実である。基本に基づいて練習を重ねた結果、現在のゴルフを習得したことを忘れてはならない。セットアップの大切な要素を一つ一つ確実に体に覚えこませていることが、プレショットの動作に見られる。バックスイングで体を十分に捻転させる。そしてコントロールされたドローショットと、パワーフェードを打ち分ける。読者は生徒にダウンスイングを教える前に、ミシェルが一つ一つ積み重ねてきたこのプレスイングの大切さを強調して欲しい。クラブと体が一体となってリズミカルに動き、そして力強いドライブが放たれている。

 ミシェルが父とデビッド・レッドベターからそして自身で学んだソフト・ドローショットの原点であるセットアップをここで詳しく見てみたい。

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パワードロー・アドレス

グリップ

 ミシェルがインターロッキング・グリップを選んだのは決して偶然ではない。タイガー・ウッズ、ジャック・ニクラウスがゴルフの一時代を切り拓いたこのグリップは、両手の一体感とバランスについて優れたフィーリングを与える。過去数十年にわたってツアープレーヤーの間ではオーバーラップ・グリップが主流となってきたが、近年、インターロックに変えるプレーヤーが増えている。ミシェルの両手の親指と人差し指で作るV字はともにあごと右肩の中間を指している。このニュートラル・ポジションは、正しい軌道とプレーン上にスイングして、ダウンスイングのインパクト時に左右の手を調整することなく、クラブフェースをスクエアに戻す最適の方法であることを生徒に教えて欲しい。

 ミシェルは大方の女子プロと異なり、左手親指をフラットに、つまりロングサムでグリップしている。ミシェルはロングサムによって、バックスイングでのシャフトの重みをしっかりと支え、テコの作用をやや大きく使っている。

ボールポジション

 ドライバーのセットアップでは左脇の延長線上である。このボールポジションによって特に努力することなく、インパクト時にクラブフェースがスクエア戻り、クリーンでソリッドなアッパースイングの中でボールを捉えることができる。

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スタンス

 ミシェルのスタンスはクローズであり、目標線に対して右足を左足よりもやや引いている。これによって、バックスイング時にインサイドの軌道に振りやすくしている。さらに、ダウンスイングでの前腕のリリースを滑らかに積極的に行わせている。こうして、クラブフェースをやや閉じてインパクトを迎え、ボールにドロー回転を与えている。

 ミシェルのスタンスで最も顕著な特徴は左足つま先の開きである。つま先はほんの僅かに開いているにすぎない。恐らく5度前後であろう。彼女の持つ柔軟性ゆえに、ヒッティングエリアで体を回転させ、そしてインパクトを迎える際にこれは妨げになっていない。読者の生徒で体の柔軟性が普通以上にあり、腰が開きすぎる嫌いのある生徒がいれば、ミシェルのスタンスを試してみるとよい。ヒッティングエリアで回転しながら、しっかりとした左の「壁」を作り、強いショットを生む助けになり得る。

姿勢

 ミシェルはレッドベターの言う「レディーポジション」(動作をすぐにも始められる姿勢)で、両膝は僅かに曲げているだけである。膝頭はくるぶしのほとんど真上にあり、上半身は脚の付け根からやや前傾させている。したがって、直立した状態から、お尻はやや下がっているに過ぎない。

手(グリップ)の位置

 グリップはボールよりやや後方に位置しているが、これは目標線後方へのテークバックを長くとり、大きく力強いスイングアークを作ることを意図している。

頭の位置

 ミシェルの頭は完全にボールの後方にある。これは上半身を力強く捻転させることにつながり、最終的にアップスイングでの力強いインパクトを実現させている。

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パワードロー・ダウンスイング

 ミシェル・ウィーはよく捻転した、大きなバックスイングのトップを作り上げている。これらすべてのパワーを、ティーアップされたボールに伝えるために、彼女は次にどのような動きをしているだろうか。この質問に答える前に、バックスイングを完成した後のダウンスイングを開始するきっかけについて広く知られている三つの理論をここで紹介したい。

理論1

 スイングの前半と後半を比較すると、同じ、重なる動きは存在しない。プレーヤーは体の捻転をほとんど完了するとき、手とクラブがバックスイングの最高点に到達する直前に、プレーヤーは腰を目標方向へ移動させることによって、ダウンスイングを実際に開始している。この腰の横方向への移動は上半身の捻転を大きく抑制するため、自然に捻転が解除される(ねじりが戻される)。ビンと張ったゴムがその緊張を解かれると、急激に引き戻されるのと同じである。

 ・・・私は「バックスイングの終了時に二方向へ動く」理論に賛成していない。手とクラブをバックスイングのトップまで上げている途中で、腰を目標方向へ横移動させるという動作を意識的にかつ首尾よくできるゴルファーがいるとは思えない。・・・

理論2

 プレーヤーは時計回りに腰と肩を大きくひねる。この捻転によって蓄えられた力は遠心力によって腕と体とクラブ放り出すことになる。つまり、ダウンスイングは自動的に始動する。

 ・・・体を中心として腕とクラブをボール目がけて振ることにより、ダウンスイングにおいて遠心力は中心的な役割を果たすことに異論はないが、ダウンスイングがまるでマジックのように、はじかれて戻ってくる動きをするという理論は受け入れられない。そうではなく、何かの動きによって引き金を引かなければならない。・・・

理論3

 同期(シンクロナイゼーション)の理論によれば、バックスイングを開始するために、まず左ひざを内側へ回し、左肩をあごの下まで回し、腰を時計方向に捻転させ、そして左手でクラブを高く押し上げる。次に、ダウンスイングの動きを開始するためには、第一段階の逆を行う。つまり、左ひざを外側へ回しながら、左肩をあごから離して上方に回転させ、左腰を逆時計回りに戻し、そして左手でクラブを引き下げる。

 ・・・私はこの理論に賛成できない。右利きのゴルファーが左手で動作を開始することは不自然だと考えるからである。この点については後に再度論じることにする。・・・

 ここで三つの主な理論を引用したが、実際にはこのような理論はまだまだたくさんある。アマチュアゴルファーはあまりの多さに戸惑っているのが現実である。その理由は、多くのティーチングプロは右サイドのゴルフよりも左サイドにこだわりすぎることにあると思う。

 ミシェル・ウィーの非凡なダウンスイング動作について論じる前に、読者に勧めたいのは、ダウンスイングについて生徒に何かのヒントを与えるに先立って、以下のような説明をしておくとよい。

 「静止状態のアドレスの位置からクラブをトップまで振り上げたら(スイング中のこの動作は1秒から1秒半である)、体とクラブはほんの一瞬ではあるが間を置いて、それからダウンスイングの動作に移る。さらに、通常の優れたゴルファーでトップからインパクトまで、スイングの時間は五分の一秒に過ぎない。この結果、ゴルファーは意識的に点と点をつなぐような動きをして、インパクトに結びつけることはできない。やはり物理的にきっかけとなる動作があって、それが連鎖的に自動制御のもとで、肩、腕、手、体、クラブが一体となって動かなければならない。この物理的に引き金を引く動作は練習によって身につけなければならない。ゴルフコースではそのようなことを考える時間はないからである。この動作は技術上正しいことが証明されており、繰り返し練習し、正確なショットを生むものでなければならない。さらに、それはごく自然な感覚で受け入れられものでなければならない。この理由から、引き金を引く動作は本来、左サイドではなく、右サイドであるべきだと私は考えている。」

 セベ・バレステロスの著書「ナチュラル・ゴルフ」の出版にかかわっていた1986年以前から、ミシェル・ウィーのように右サイドからダウンスイングを始めるゴルファーを目にしていた。当時セベは私に、右利きのゴルファーはダウンスイングのきっかけを右サイドから始める方が自然にできるし、体に蓄えた力をいっそう自由に、余すところなくリリースできると話していた。左サイド重視のティーチングプロからコーチを受ける以前のセベが語った言葉は正しいと思う。当時のセベはすばらしいショットを打っていた。

 さて、ミシェル・ウィーの動きに目を向けよう。右サイドの同時の動き、すなわち右足で地面を踏みつける動き、右腰を下方に押し付ける動き、右ひざを内側に押し込むことによって、ミシェルはダウンスイングのきっかけとしていると私は見ている。

 私はこれまで数百人のスイングの連続写真を見てきた。 「ゴルフマガジン」誌で編集者を務めていた私の先輩であった人物の影響を大いに受けているが、その経験から、ミシェルの三つの起点からなるダウンスイングはあらゆるゴルファーの中で最も同期した、最良のスイングだと言い切れる。それはタイガーよりもすばらしい。

 生徒にミシェルの右サイドの動きを模倣させるとよい。彼らは口をそろえて、かつてミシェルが「ゴルフダイジェスト」誌の中で語った台詞を繰り返すことだろう。「すべてが一緒になってトップへ行き、そして下りてくるという感覚です。」生徒がフェアウェイのセンターにドライバーショットを放って、「クラブのリリース、体の動きの正しい順序が意識することなく『ドミノ効果』のように発生する」とあなたに感想を述べること、これがあなたの目指すところであろう。

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タイガー・ウッズの新しいスイング

ジョン・アンドリソーニ
USGTFレベルV

T. ターボドライブ・セットアップ

 タイガー・ウッズはブッチ・ハーモンから離れて、ハンク・ヘイニーの教えを請うようになった。それ以来、世界中のゴルファーやレッスンプロはタイガーの新しいテクニックに好奇の目を向けている。ハンク・ヘイニーはマーク・オメーラのスイング改造に取り組んだコーチであり、その結果オメーラは1998年にマスターズと全英オープンを制している。
 以前のタイガーはパワードロー・スイングで世界のツアーを席巻した。その後2005年にスイングを一変させると、世界の第一人者として戻ってきた。2005年のマスターズ、全英オープン、ワールドチャンピオンズの勝利によって、タイガーと新コーチが正しいのであって、渦巻いていた様々な批判は間違いであることが証明されたのだ。
 ここでの分析は4部に分けて、タイガーの新しく画期的なターボドライブ・パワーフェード・スイングの秘密を明らかにしていく。最初に、プレスイングのルーティンとセットアップを分析し、次にバックスイング(第2部)、ダウンスイング(第3部)、タイガーが教わったユニークなドリル(第4部)を扱う。レッスンプロであるあなたはこの記事を読んで、生徒がそれらを応用して、スイングを改善し、より正確なショットを身につけさせるために役立てるとよい。
 タイガーがゴルフの第一人者として躍り出た第1期は、1997年のマスターズ制覇に始まり、2002年まで続く。タイガーのドライバーのセットアップは非常にユニークだった。両肩はオープン、スタンスはわずかにクローズ、ボールの位置は左足かかと線上よりもセンター近くに寄せており、両腰は地面と平行である。タイガーはこのアドレスからドローボールを打ち、長い間完全にスイングをコントロールしていた。しかし、スイング前のルーティンがやや早くなり、手と腕とクラブヘッドのリリースのタイミングがずれることが目につくようになった。弾道は目標方向から大きくそれることがあり、そのため1ラウンドでいくつかのダブルボギーを叩くようになった。これは勝負を分ける大きな要因となってきた。タイガーのダウンスイングについては第3部で詳しく述べるが、ここでは、インパクトゾーンでのリリースに力が入りすぎると、時々ダックフックが出るようになっていたことを指摘しておきたい。ダックフックを恐れたり、スイング中にそれを感じたりすると、タイガーは腕のスピードを緩めてリリースをコントロールしていた。そのため、逆に極端なスライスが出ていた。

 新しいスイングに移行する必要を感じていたとき、マーク・オメーラ(ツアー仲間で、フロリダの同じゴルフコースで練習していた)からハンク・ヘイニーがスーパーコーチであるとの強い勧めを受けて、タイガーはヘイニーの門を叩く。間もなく、タイガー自身の言葉によると、自分のスイングを変える固い決意に基づく「改造プロセス」に取り組むことになる。(タイガーの場合は、ドローからフェードスイングへの改造)
 皆さんの生徒がコントロールされたパワーフェードを打つための改造に取り組みたければ、タイガーに倣うことを勧める。まずボールの後方に立って、ボールが空中を左から右へカーブを描いて飛ぶことをイメージして、次にクラブのフィーリングをつかむために1,2度ミニスイングをして、さらに正しいリズムを感じて、最後にタイガーのようにセットアップする。ここまでの時間をとることが大切である。
 タイガーの新しいウィークグリップは両手のV字が右耳を指す程度のウィークであり、スタンスはオープン、右足はスタンスラインに対して直角、左手の甲はボールの位置よりやや目標方向に出して、両肩のラインはスタンスラインとまったく平行、ボールの位置はスタンス内の目標方向寄り、左腰の傾斜角は右腰の傾斜角に比べるとやや立っている。
 上述のタイガーの新しいアドレスから、アップライトのプレーンをスイングすることによって、アップスイングでボールを捉え、コントロールされたパワーフェードを打つことができる。生徒に教えるにあたって、ドローよりも遥かにやさしいフェードボールの打ち方である。生徒のバックスイングとダウンスイングにも手を加えて矯正し、練習ドリルによって新しいスイングになじませる必要があるのは、言うまでもない。

 

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U. ターボドライブ・バックスイング

 第1部に記したタイガーの新しいアドレスの考察は、トッププレーヤーと専門家による観察と話し合いに基づいて導き出されたものである。では次に、ハンク・ヘイニーコーチのもとで習得したタイガーの新しいバックスイングを考察する。新しいバックスイングをより明確に理解するために、タイガーの以前のパワードロー・バックスイングを観察してみたい。

タイガーの以前のバックスイング

 ブッチ・ハーモンの指導を受けていた頃のタイガーはバックスイングをスリークォーター(3/4)で終えてしまっており、フルターンをしていなかった。このコンパクトなスイングはアイアンで距離をコントロールするために役立っていた。但し、タイガーのタイミングが完全でないかぎり、この肩の浅い回転はドライバーショットに悪影響を及ぼしていた。タイガーのスイングはあまりにも短く、円曲線を描いていたため、ダウンスイングがどうしても速すぎる場合があった。練習熱心で知られるタイガーでさえ、小さな(短い)スイングは最終的に、特にドライバーショットでミスを誘発することになった。非常にコンパクトなバックスイングを採り入れると、回転の生み出す力が弱くなり、ダウンスイングへ切り返すタイミングが難しくなるため、クラブヘッドをボールにスクエアにまたしっかりとインパクトする再現性が低くなる。その結果、パワーと正確性が失われる。

 皮肉なことではあるが、タイガーの以前の勝利のスイングでは非常に優れた点が大きな欠点となっていたことである。タイガーの以前の動作には大きな筋力と、極限までの柔軟性そして卓越したハンド・アイ・コーディネーション(視覚による判断と手の動きが一致すること)が求められた。タイガーはこれらすべての条件を具えている。タイガーの以前のスイングは「おじいさんの時計」のように複雑なメカニズムが内蔵されていたのである。正しく時を刻むには時計の一つ一つの部品が完全に同期して機能しなければならない。タイガーのテンポ、リズム、タイミングでしか実現できないスイングだった。なぜこのようなスイングを完成させたかといえば、シャロー(フラット)のスイング動作はアップライトの動作よりも優れているとするブッチ・ハーモンの理論に基づく。この種のバックスイングでは、ドライバーをより長い軌道に沿って移動させるため、ボールにスクエアに戻すのが一層難しくなるだけだ。
 「ドライバーはフラットなプレーンでインパクトを迎えなければならない」とブッチは私に語っている。私とブッチは「勝つゴルフの4大要素」を共著した仲なのだ。

 また、「フラットな角度でインパクトを振りぬくには、スイング全体が比較的フラットなプレーン上を、上下でなく体の回りをクラブが移動しなければならない」とも語っている。

 タイガーはハーモンの助言を採り入れて、すばらしいゴルフを長年にわたり展開したが、しかし、バックスイングの初期の段階で目標線からかなりインサイドにクラブを引いて(腰を極端に大きく捻転させながら)、ダウンスイングで両腰を急激に回転させるという悪癖がゆっくりと確実に忍び込んでいった。こうして、スランプの間、プルフックとプッシュスライスを打つタイガーのプレーが増えていった。結論として、いかに回復力に優れたタイガーでさえも、新しいスイングを学ぶために、新しいコーチへの転換を迫られたのである。

タイガーの新しいバックスイング動作

 タイガーの現在のバックスイングは大きなアップライトスイングであって、肩を力強く回転させる一方、腰の回転を抑えていることが特徴的である。バックスイングで腰の回転を抑えることによって、上半身と下半身の抵抗を作り出し、大きなトルクを生み出している。

 体重移動が始まると、タイガーは右腰の回転を始動させている。オープンスタンスであるため右腰は以前ほどには大きく回転しない。したがってクラブは横ではなく縦に上っている。ハンク・ヘイニーのコーチングを受けるようになってから改善されたタイガーのスイングの特徴である。

 両腕を後方へそして肩をあごの下まで一杯に回転させると、クラブはさらにアップライトに動く。クラブがトップへと近づいていくこの時点で、左肩のプレーンがクラブのプレーンと一致しているかぎり、スランプ時代に見せていたフライングエルボーへの心配は解消されている。自然にアップライトの軌道を描いているからである。

 極端な時計方向への回転でなく、左肩が下に下がっており、バックスイングの初期に右手首をヒンジ(コック)し、平行にまたはややレイドオフ気味に十分なバックスイングを行なうことによって、右ひじは体から離れず、クラブをフラットでなくアップライトに振ることができる。

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V. ターボドライブ・ダウンスイング

 以前のタイガーはプレーン角を極度に傾けてバックスイングを開始し、インパクトに向けてクラブが目標線のかなり内側から入るようにスイングを行なっていた。しかし、クラブが体でブロックされてしまう事態がしばしば起きていた。したがって、「つまる」ことを察知して腰を勢いよく回転させて自由な空間を作り出し、同時にクラブヘッドをスクエアにするため右前腕と右手を返すという反射的な動作が見られた。その結果、ひどいフックショットが生まれる。

 これと反対に、時々ダウンスイングで右足を過度に押し出す動作が見られた。右足が地面から離れるのが早すぎる現象を含めたこの誤りはバランスをくずし、目標の遥か右へ押し出すショットとなる結果を招いていた。

タイガーの新しいダウンスイング

 現在のタイガーは左肩、左腕、クラブを円形のプレーン上でスイングしており、右足が地面についている時間が長くなっている。この新しいダウンスイングの動作はバックスイングと比較するとややフラットではあるが、安定感が増し、より優れたダウンスイングを行なう時間を与え、以前よりもシンプルにまた安定したインパクトを迎え、力強く正確なドライバーショットを放つ確率が高くなっている。ここで、タイガーがどのような動きから、ダウンスイングを開始し、正確なターボドライブ・ティーショットを打っているかを詳しく見てみよう。

 タイガーは腰を平行移動させることをきっかけとしてダウンスイングを開始し、そしてほとんど同時に、バックスイングで地面からわずかに上げた左かかとを着地させている。この二つの動きを同時に行なっている(ダブルトリガー)主な理由は、手、腕、クラブに下半身に追いつく時間を与えるためであり、これは極めて重要である。

 トップに到達する瞬間に左腰を時計の逆回りに回転させるように教えている現在の多くのティーチングプロの意見に従うとすれば、体はクラブよりもはるかに前へ移動してしまうため、クラブフェースは開いてインパクトを迎え、ボールは右方向へ飛び出すことだろう。さらに、タイミングがとれず、体に動きがさえぎられるため右手と右腕を大きく使ってミスショットを防ごうとすることだろう。こうした緊急脱出的な手段をとると、クラブフェースを閉じてしまうことになり、フックを打ちやすくなるのが問題である。

 ヘイニーの指導を仰ぐ以前に、タイガーはこれらの問題を経験していた。しかし、現在のタイガーはこれらの問題を克服している。ヘイニーがいくつかの簡単な指示を与えると、タイガーはボールに向かって立ち、すばらしいショットを連発しただろうか。皆さんのようにゴルフをよく理解している人は、セットアップ、バックスイングあるいはダウンスイングを少し変えるだけでも、それに慣れるには時間がかかることを知っている。タイガーが2005年に勝ち始めるまでゆっくりとした進歩を遂げたことについて、口うるさい批判者たちが何も言わなかったのはそのためなのだ。大切なことは、USGTFの資格を持つゴルフインストラクターである皆さんは、生徒に教えるとき忍耐の一文字を家まで持ち帰るようにしなければならない。

 さて、タイガーの腰が平行に移動すると、体重は左足と脚に移動し始め、クラブはプレーンのラインと平行に落ちる(ラインの内側がベストであるとヘイニーは考えている。したがって弧はフラットになるのが理想的である)、タイガーは左腰を力強く左へ回転させる。これによってクラブヘッドのスピードは急激に上昇する。スイングのこの時点で、エネルギーは腕を伝って両手に達し、そして、シャフトに伝わっていく。タイガーのクラブスピードは秒速58mに達して、さらにしなりを帯びたシャフトはクラブフェースを正確にボールにヒットさせる。インパクト後、タイガーは右腰、ひざを時計回り逆方向に回転させて全身をリリースさせ、スイングを終了させる。タイガーは右サイドをぶつけることによって、全エネルギーをボールの後ろに集中させて、力強いフェードボールを打つ。タイガーは左手を止めるようにしてボールを打ち、決して流さないからそれができる。

 生徒がタイガーのようにスイングすると、ボールは高く舞い上がり、高い放物線を描いて、目標のやや左を目指し、そしてフェアウェイのセンターに着地することだろう。

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W. タイガーのターボドライブ・テクニックを身につける

 第1部から3部において、タイガーが力強く、コントロールされたフェードボールを打つ鍵となるアドレス、バックスイング、ダウンスイングを分析してきた。

 最近のタイガーに最も大きな影響を与えているのはハンク・ヘイニーだが、ティーチングプロのルディー・デュラン、ジョン・アンセルモ、ブッチ・ハーモンがそれ以前にタイガーに教えた以下の3つのドリルは現在の彼のスイングを形成する上で大きく寄与している。これらの優れた3つのドリルは図解を必要としないほど非常にシンプルである。

デュランのバランスドリル

 練習場のティーやコースレッスンでデュランはタイガーにショットさせると、ボールが転がって止まるまでフィニッシュの状態を維持させた。私は電話でデュランに尋ねたところ、このドリルはバランスの取れたスイングを体感し、それを繰り返させるために有効だと言う。このドリルを始める最も良い方法は、ショートアイアンから始めて、次にミドルアイアン、最後にドライバーで練習することである。各クラブをどのようなテンポでスイングするとバランスを失わないかを感じ取るため、スイングスピードをさまざまに変えてみることも同じように大切だ。

 このドリルはタイガーがゲームを組み立てていく上で、特にドライバーショットに対して非常に大きな効果が見られた。足がふらつくほどスイングしないことをしっかりと教え、リズミカルにスイングして加速させることを強調するならば、このドリルはあなたの生徒にとっても効果があるに違いない。

アンセルモの親指と指のドリル

 このドリルではクラブを使わない。手首が手前に折れて、スイングがフラットになるタイガーの問題を解決したのはこのドリルである。そしてヘイニーが現在教えているレッスンはこの延長線上にある。

 アップライトにバックスイングして、トップで左手首をフラットに維持する(折り曲げない)ように教えることによって、皆さんの生徒もタイガーのように力強く、正確なショットを打てるのだ。

 アドレスのポジションをとって、親指を上に向けて左腕を前方に伸ばす。右手のひらで左手の親指を握る。左腕を伸ばしたままゆっくりと飛球線後方に引く。限界まで達したら、そのポジションを10秒維持する。バックスイングがアップライトの軌道を描いていることに気づく。それが理想であり、その間左手首はフラットである。

ハーモンのスローモーションスイング・ドリル

 タイガーに教えたこのドリルは、体とクラブの連続した動きをスムーズに行なうことを生徒に教えるのに役立つ。

 75%の力でドライバーをスイングすることに全神経を集中させる。このドリルでは、スムーズなスイングを妨げる手や手首の小さな筋肉でなく、強制的に腰、腕、肩の大きな筋肉を使ってスイングさせることが大切だ。スイング動作をリズミカルに行なうために、流れるようなフットワークを意識させる。

 スイング動作を意識せずに行なえるようになるまでこのドリルを続けさせる。生徒がこの動きをつかんだら、体とクラブの動きを支配するタイミングとリズムの要素が同期している(シンクロ)ことの確たる証となる。

 最後に、ボールを打たせて、スイングスピードを上げていく。バランスを維持し、力強く、目標方向にボールが打てるようになれば、理想のテンポを体得したことになる。

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スポーツにおけるバランス感覚の必要性

USGTFJAPANメンバー
加賀崎 美崇博士

 近代アスリートにおいてはあらゆる身体能力の高さが求められていますが、なかでも特に必要とされる能力が「均整の取れたバランス感覚」であると言えるでしょう。トップアスリートを次々と産出しているアメリカやロシアはいち早く選手のバランス能力の開発に取組んできた言わば「バランス先進国」。
 バランス感覚というと、肉体機能や身体能力が大きく関係しており、「生まれ持った感覚的な能力なのでは? 」とお考えの方もおられるでしょう。しかし、バランス感覚は日常生活においても十分に鍛えることができるものなのです。バランス感覚は、神が生物に与えた大切な身体機能の一つなのです。
 霊長類においては体のコアを支える「インナーマッスル」の機能と、それをつかさどる神経系の機能が、バランス感覚を決めているのです。
 バランス感覚はあらゆる競技で求められますが、ゴルフやスキーなどは特にバランス感覚が重要視される競技だと言えるでしょう。バランス感覚とは、脳とインナーマッスルとの「連動性」をいかに速く行うことができるかにより大きく左右されるのです。そのため、バランス感覚をさらに鍛えるためには、日ごろからインナーマッスルを鍛えつつ、同時に脳によるバランスコントロール能力も磨いていく必要があるのです。
 しかし、ゴルフの場合は実際にインナーマッスルと脳を連動させるのはテークバックの始動からインパクトまでの瞬間だけ。アマチュア男子の場合、スイング時間は平均して1回あたり約1.38秒と言われているので、1日中ゴルフをしていたとしても、実際にバランス感覚を鍛えることができる時間は「2分にも満たない」とい結果になるのです。これではなかなかインナーマッスルと脳の連動性を磨き上げるまでには到底至らないのです。とは言え、脳との連動性を鍛える事はけっして難しい事ではなく、身の回りにある物を使い、霊長類が持つ本来の潜在能力であるバランス感覚を目覚めさせる事は十分に可能なのです。例えば、太いポールやお茶缶の上に板を乗せたような道具。その上に立ってバランスをとる練習を行うことで、三半規管の鍛錬や人間が本来持ち合わせている脳におけるバランスコントロール力を呼び覚まし、インナーマッスル、首、太もも、ひざ、足の裏などのゴルフに必要不可欠な筋肉までも同時に鍛えることができるという意外と簡単なものなのです。

 USLPGAで不動の強さを誇るスウェーデン出身の賞金女王「アニカ・ソレンスタム選手」 彼女は本人も認めるバランス信仰者の一人。彼女はショットの精度にさらに磨きをかけるため「バランス・トレーニング」をいち早くゴルフに取り入れた先駆者的選手の一人なのです。彼女のドライバーの平均飛距離は男子顔負けの265ヤード前後でLPGAでの飛距離ランクは4位。
 優れたバランス感覚を習得することにより、スイングの贅肉となる部分のロスを削り落とし、どのようにすれば、シンプルかつナチュラルに飛距離を出すことができるようになるかを世間に証明して見せてくれたのです。
 彼女のトレーニング方法は、バランスボールや鉄球の上に板を乗せその上でスイングを行うことにより、左右バランスの鍛錬運動だけでなく、全方向に対してのバランス感覚までをも見事に鍛え上げたのです。それにより、「センター重心」を常に自ら意識ができるようになり、結果、スイング時における「下半身・上半身・頭」のブレが収まり、起伏が激しいどのようなライからも正確無比なショットが打てるようになったのです。もしかすると、鍛えられた彼女の脳にはどのようなライにおいても全て平坦なライにしか既に見えないのかも知れません。
 霊長類は、どのような姿勢であっても「センター重心」を感じることができ、その「センター重心」を自らの意識でコントロールできるようになると常に同じ軌道でクラブを振ることができるようになるのです。
 皆様の、日々の練習においてもバランスを常に意識され、段階を踏まえた上でバランス・トレーニングを練習メニューに取り入れられても面白いかも知れませんね。

注:加賀崎博士は子息である航太君(11歳、レフティ、ゴルフを始めたのは8歳から)のバランス感覚を幼い頃から鍛えてこられた。今や航太君はバランスボールの上で眠ったり、食事を摂ったり、さらにはビール瓶の上にスケートボードを置いて、スイングすることさえできる。昨年の世界ジュニアでは2位の好成績を収めている。

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